016
 あなたはこれから初詣へ行かないかとゆきのを誘った。
「初詣……って言うか、アンタ、それ、そのカッコ…………あはははは!!!」
 言い終わらないうちに、ゆきのが大笑いし始めた。さっきまで半笑いだったが、我慢できなくなったようだ。店の他の客もなんだなんだとこちらを見る。
「いや、ごめ、それ……あはははは!!」
 ゆきのも笑いながらまずいと思ったのか、腕を引っ張られて店の外へ。
「なんなのアンタそれ、革ジャンは良いけど袖!」
 ロックを意識しました、とビシッと答えると、ゆきのは涙目になって再び爆笑する。ウケたようだ……。しばし、ゆきのの笑いがおさまるまで待つ。
「あーおかしい……、なんだっけ、初詣? アラヤ神社? そうだねえ、休憩時間を繰り上げてもらえないかきいてみるよ」
 ゆきのはまだ笑いが抜けきっていない顔で店へと戻っていった。そしてしばし待つと、オーケーだから裏で待っていてくれと言われる。
「お待たせ!」
 店の裏で待っていると、ゆきのがバックヤードから出て来た。細身のジーパンとスニーカー、上は青地に龍の刺繍のあるスカジャン、白のマフラー。こういうさらっとした着こなしが、さすが様になる。首にはカメラをさげている。
「あーもう、新年初笑いだわ。アンタって顔だけは良いけど、ほんと顔だけだよね。まあ、そこが良いとこか!」
 そんなに面白いかと聞くと、ゆきのは大きく頷いた。
「はー……。ちょっとね、バイトしつつもいろいろ考えてた最中だったわけ。でも、アンタを見たら吹っ飛んじゃったよ」
 ゆきのは大きく息をついてからそう言った。

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