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あなたは何か悩み事でも? と聞いた。 ゆきのは今度は首を横に振った。 「悩みってほどじゃないよ。今年は三年生になるわけだし、しっかりしなきゃなーってこと、かな」 進路のこととか? あなたはつい聞き返した。 「まあね。でも、それはみんな同じだよね。むしろ私はある程度の方向性は定まってる方だし……」 ゆきのは首からさげたカメラを触った。やはり写真の方へ進むのだろう、それはまわりのみんなも知っていることだ。定まっているなら思い悩むこともなさそうだが……。 「……ある程度決めちゃうとね、それでほんとにいいのかな? って思うこともあるんだよ」 他にもやりたいことが? とあなたが返すと、ゆきのはにっと笑ってみせた。 「かもね。なんて言うか……ほんの憧れ程度のことだから、現実的に進路にしていいかどうかすら……。って、そこにアンタがその格好で来たもんだから、笑っちゃって吹っ飛んだってわけ! ふふっ、うじうじ悩んでてもしょうがないって言うか。憧れがあったら行動しなきゃだね! アンタみたいに」 ゆきのは清々しい笑顔を見せた。 「さ、時間ないし行こうか!」 あなたはゆきのと雑談しながらすぐ近くのアラヤ神社へと向かった。 アラヤ神社はいつもの閑散とした様子はどこへやら、参道には屋台がいくつも立って、大変な賑わいだ。 屋台をのぞいてから参拝の列に並び、ふたり一緒に賽銭を投げ入れてお参りをした。フィレモンへの挨拶も忘れずに。 社務所もお守りやおみくじを引く人々で賑わっている。 「よし、新年一発目の運試しだ。 も!」 ゆきのにおみくじの筒を渡された。
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