010
 あなたはアラヤ神社へやって来た。
 アラヤ神社はいつもの閑散とした様子はどこへやら、参道には屋台がいくつも立って、大変な賑わいだ。
 結局ひとりで来てしまったなあ。まあいいか、お参りしておみくじでも引いていこう……と思っていると、背後から呼び止められた。
!」
 振り向くと、そこには南条君がいた。グレーの丈の長い上品なチェスターコートに、水色のマフラーで襟を埋めている。
 あなたが驚いて、どうしてここにと言うと、いつもの不遜(と思われがちな)口調が返ってきた。
「貴様、アポイントメントを取るなら取るでそう言えばよかろう」
 ははあ、もしかしてさっきの電話のことだろうか。あなたは結局アポは取らずに切ってしまったのだ。
 忙しそうだと思ったから、とあなたは返す。
「正月の仕事などたいした意味はない、行事に過ぎん。貴様から電話があったと聞いてな、何事かと思って探したぞ。で、何の用だ?」
 なんとまあ、わざわざ探してくれたらしい。見ると、神社の入り口の向こうに黒い高級車が見える。あなたはちょっと申し訳なく思いつつも、一緒に初詣に行けないかな、と思っただけだと伝えた。
「初詣……。なるほど、このアラヤ神社はフィレモンにゆかりがある。ペルソナ使いならばここを詣でねばならんということか。よかろう!」
 そんな大層なことではないんだけど。でもまあ、これで一緒にお参りはできそうだ。彼のことだから、本当は忙しいのに隙を見て足を運んでくれたのだろう。お参りぐらいの時間ならなんとか許してもらえるかな(誰に?)、ということで、早速南条君と参拝の列に並んだ。

「ふむ、これが初詣」
 並びながら南条君は珍しそうにあたりを見ている。さすがに神社は来たことあるでしょ……と思ったが、そうか、南条家なら神社も貸切状態(?)で参拝するのだろう。それどころか専用神社があるに違いない! こうして並ぶなんてもってのほかだ。周囲にいるであろう南条家御付きの黒服の視線が痛い。
、これは何か特別な作法はあるのか? 皆、何か投げているようだが……」
 そうか、お賽銭というのを投げたことがないのか。やはり専用神社説が強まる。それにそうだ、今は小銭も持っていないだろう。あなたは財布を開けた。

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