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 あなたは十円玉を渡した。
「む、十円か……久しぶりに触った気がするな」
 そう、南条君と言えば表と裏が逆の十円玉!
 以前は小銭なんていうものを手にすることは滅多になかったらしい。ああやって一緒に戦って行動している間に、南条君にはいろんな"初めて"の経験があったと、あなたは街が落ち着きを取り戻しつつある頃に聞かされた。それは普通の高校生には当たり前すぎる、本当にささやかなことばかりだった。小銭はもちろん、店や自販機で物を買うとか、その辺のガードレールに腰掛けるだとか。
「何事も経験せねばな。今年はそれが第一の目標かもしれん」
 南条君は十円玉を見ながら少し笑顔を見せた。そう言えば、事件以前はこうして一緒に出かけたり、一緒に笑うなんて考えられないような、ごく希薄な関係だった。あなたも自分のまわりに起きた変化をしみじみと思う。そして南条君は、自分に起きたそうした変化の波に乗って前進しているのだ。
 そうこう話しているうちに順番が来たので、一緒に賽銭を投げ、鈴を鳴らして参拝した。フィレモンへの挨拶も忘れずに。

「ほう、これがおみくじ。……結構重いな、中に何が?」
 南条君におみくじの筒を渡し、振って中の棒を一本出すのだと教えた。そして棒に書かれた番号の紙をもらう。
「ふむ、偶然に神の意志が宿るというわけか……。やってみよう」
 あなたもおみくじの筒をがらがらと振ってみた。

→ おみくじを引く!

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