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感想&考察&雑感置き場その1 キャラクターやペルソナまわりのこと。 |
麻希ちゃんの髪型の変化 [2017.4.17] 『罪罰』の麻希ちゃんの姿を初めて見た当時、髪を切ってショートヘアになったことについては「なるほど、『異聞録』を経て変わったんだな」と普通に思ったのですが、前髪の分け目が変わったことには驚いた、というか「なんで?」と思ったのを覚えています。その後、どれだったかの公式本に「内向的で重い印象だった髪をばっさり切って身軽になった」というようなことが書いてあったので、「単なるイメチェンか……」となんとなく納得して、それ以上のことは考えませんでした。 で、少し前にふと気づいたのですが……と言っても、たぶん見た瞬間に気づいた方が多かったのだろうと思うのですが、あの髪型は麻希ちゃんのお母さんの髪型とほとんど同じなのです。とても単純なことなのに、私は全く気づいていませんでした。というわけで、ン十年越しに気づいたこの件についてよく考えてみました。 『異聞録』では、麻希ちゃんは仕事で忙しくて会いに来てくれない(※実は神取の差し金でしたが)お母さんをその思慕ゆえに恨み、拒絶し、作り上げた『理想の世界』ではお母さんは始めから存在しない、という設定にしていました。そして『異聞録』の物語を経てお母さんとわかり合います。その3年後の『罪罰』ではお母さんとそっくりの髪型。つまり、母という存在を精神的に受け入れたことで、母に似るようになった……と言うか、自然と母に似ることを「拒否しなくなった」ように思われます。 考えてみれば、『異聞録』の麻希ちゃんはド文系に描写されていました。美術部で絵を描くのが好きで、ファンタジー小説が好き。お母さんはバリバリの科学者なので、真逆の方向性と言えるでしょう。これは、麻希ちゃんがお母さんを(お母さんに似ることを)拒否している表れだったと解釈することもできます。 そして『罪罰』では一転して麻希ちゃんは理系の道に進んでいます。理系を選んだのは偶然(『異聞録』の物語を経た結果)なのだとしても、理系に進めるだけの頭脳があるのは確か。国立大学だそうですし。やっぱり、お母さんの才能を遺伝的に受け継いでいて、それを開花させたのでは、とうかがわせます。 ところでゲームの中でどこまで言っていたかわからないのですが、麻希ちゃんが勉強しているのはおそらく「臨床心理学」ですよね。文系と理系にまたがる分野のため学校により配置は異なりますが、どこにしろ内容は医療に関わるので、かなり理系寄りだそうです。 『罪罰』では「柊サイコセラピー」でセラピスト見習いをしていますが、セラピストとカウンセラーって何が違うのか、というのも分類が難しいというか切り離せないもののようです。一説にはセラピーの方がより「治癒・癒し」に能動的だとか。ちなみに小説版(『ペルソナ・アナザービジョン』)ではカウンセラーという名目に統一されていました。 というわけで、ン十年越しで麻希ちゃんの分け目の謎が解けたのでした。 |
本人とペルソナの武器の不一致 [2018.2.23] 初めてプレイした時から気になっているのですが、異聞録では本人の使用武器と初期ペルソナの物理スキルの武器の種類が必ずしも一致していません。普通に考えたら一致させますよね、ペルソナは自分自身のはずです。 どのように一致・不一致なのかは以下の通り。
一致しているのはマークと綾瀬。一致していないのは主人公、南条、ブラウン、玲司。物理スキルの無いほかの3人はひとまず除外します。 考えられることとしてはまず、「特に意味はない!」という可能性。単にゲームバランス的な問題でこうなっている。それから「ペルソナの神話・伝説上の設定に寄せている」という可能性。ざっと調べましたが、これにについてはそれらしい確証は得られませんでした。それから「本人の精神性を表している」という可能性。一致している者は人格が安定していて、不一致の者は二面性が強いというものです。これについては、比較的マークと綾瀬は人格にブレが少ないと思うので、結構納得できると思います。とは言え、人格関係はいかようにも解釈できるので、違うと言うことも可能なのですが。とりあえず、このように一致・不一致の理由を考えてみるのも楽しいのでは〜、という話でした。 ちなみにマークの初期ペル「オグン」は「怒涛の連打」という斧属性の物理スキルを使うんですが、しかし気になるのは見た目。オグンって槍を持ってるんですよね……グラフィック上では斧じゃないんです。謎は深まるばかり。なお、オグンは信仰上では製鉄関係の神なので、剣、斧、ナタなど金属武器ならだいたいなんでも司るようです。 |
異聞録固有のペルソナ種族名 [2018.2.23] 異聞録には他のナンバリング作品には無い要素として、アルカナにペルソナの種族名(?)としての別の呼称があるという特徴があります。
どうですかこの中二心をくすぐる種族名! ものすごく好きなんですこれが…! 異聞録のペルソナには上記「種族」が(たぶんそういう呼び方で合ってると思う)、悪魔には「大種族」「小種族」があり、悪魔・ペルソナいずれにも「大属性」「小属性」があります。『女神異聞録』というだけあって、さすが女神転生っぽいのです。 これでいくと、主人公:魔神(ELEMENTAL)、麻希:女神(HOLYLIGHT)、マーク:破壊神(PHYSICAL)、南条:鬼神(HOLYLIGHT)、エリー:大天使(HOLYLIGHT)、ブラウン:軍神(PHYSICAL)、ゆきの:地母神(PHYSICAL)、綾瀬:幻魔(ELEMENTAL)、玲司:魔王(EVILDARK)、それからついでに神取:邪神(EVILDARK)、となるわけです。みんな素晴らしくかっこいいのです。 ![]() ↑こうして見ると、主人公と綾瀬が同じ属性なんだなあ。意外? ついでに異聞録のペルソナの『相性』の話 異聞録のプレイヤーキャラクターは全員がペルソナを付け替えることができるので、P3以降で言えば「ワイルド」です。しかしキャラクターとペルソナの間には相性があり、全員が全てのペルソナを付ける(持ち歩く)こと(「降魔」と言います)ができるわけではありません。言うなれば「半ワイルド」でしょうか。この相性が「大属性」に関わりがあり、例えば基本的にHOLYLIGHT属性と好相性である麻希はEVILDARK属性のペルソナを降魔できない、そして基本的にEVILDARK属性と好相性である玲司はHOLYLIGHT属性のペルソナを降魔できない、…というようなことです。 さらに相性は単純に「そのペルソナを降魔できる・できない」だけではなく、召喚(戦闘中に呼び出すこと)の可否とペルソナの性能の引き出し具合にも差が出ます。 ↑「降魔でき召喚もでき、最高の性能を引き出せる(相性最高)」 ↑「降魔でき召喚もでき、そこそこの性能を引き出せる」 ・「降魔でき召喚もできるが、まあまあの性能しか引き出せない」 ↓「降魔はできるが召喚はできない」 ↓「降魔できない(相性最悪)」 ……に分かれます。相性は良い・悪いの二択ではなく、このようにグラデーションがあり、奥深いです。 ちなみに「降魔はできるが召喚はできない」って意味がなさそうですが、異聞録では降魔しただけでキャラクターのステータスにペルソナのステータス補正などが加算されるのです。戦闘中に召喚できなくても、降魔しているだけで意味があります(異聞録では一人につき3体まで降魔して行動できるんですが、これもその理由でしょう)。 相変わらず玲司の話ですみませんが、EVILDARK属性のペルソナは特殊で、ほとんど玲司にしか扱えないのが特徴です。そして他のみんなが大概扱える他の属性のものを、玲司はほとんど扱えません。そして玲司が唯一、イレギュラー的に使えるHOLYLIGHT属性ペルソナが「サタン」であるとか、小ネタも満載です。この相性問題は各キャラクターで考えていくととても面白く、よく出来ていて感心するばかりです。 ちなみに最近気づいてびっくりしたんですけど、この「種族名」は説明書に載っていません。公式攻略本にしか載っていないんです。なぜだ……。2以降ではこうしたカテゴリ縛りを考えるのは難しいらしく、この種族名はなくなりました。 |
異聞録の謎、誰か教えて! [2018.2.23] (1)説明書に載ってるイラストのペルソナが特定できない謎 異聞録の説明書の4〜5ページに載っているベルベットルームのイラストに、ペルソナの仮面が多数浮かんでいます。これ、よく見るとなんのペルソナなのかわかるのもあれば、わからないのもあるのです。わかる方、教えてください。 ![]() 緑が間違いないもの、オレンジはたぶん、ピンクが不明です。 わからないものの中にカワンチャによく似たのがあるのですが、異聞録のカワンチャは姿が違うし、ペルソナにもなりません。↓これが異聞録のカワンチャ。 ![]() しばらく考えていて、ふと、武多さんのペルソナという可能性……!? とハッとしたんですが、見比べたらどうやら違うようです。武多さんのペルソナは名前、アルカナなど一切不明なんですよね。これも謎。これは情報求むと言っても無理そうです。いつか金子一馬画集のペルソナ編が出た時に収録されることを願うばかりです。 ↓これが武多さんのペルソナ。結構かっこいいのです。セイメンコンゴウ系ですよね。 ![]() 『女神異聞録ペルソナ』より引用 ⒸATLUS 現実的には、このイラストを描く当時はまだ全てのペルソナデザインができていなくて、適当に描いたorこのイラストのあとでボツになったデザイン、かな〜とは思うのですが。意味付けするとしたら、今作に出てくるペルソナは、あらゆるペルソナのほんの一部にすぎない、ほかにももっとたくさん、人の数だけあるんだよ〜という意味かもしれませんね。 (2)「イグアナ」の謎 セベク編のバッドエンドの中で、理想の麻希がマイによって妄想の世界に連れ戻されるシーンがあります。その時、理想の麻希が「いやぁ! イグアナ…!」と言います。これ、どういう意味なんでしょう。わかる方、教えてください。 私が真っ先に思い浮かべたのは『イグアナの娘』です。元は萩尾望都先生の漫画作品で、1996年にTVドラマ化され、当時大ヒットしていました。私も当時見ていました。ストーリーは、娘を愛せない母親のせいで自分は醜い(イグアナの姿)と思い込んでしまっている少女の物語です。確か、鏡に映る自分の顔がイグアナに見えてしまうのです。 問題のセリフは状況的に、「理想の麻希が、この状況の元凶が自分自身であり、つまりみんなを殺そうとしていたのが自分だと考え、自分を最低の人間だと思い込む。その直後、(おそらく)混沌の鏡に映った自分の姿を見た瞬間」のものだと思われます。この時、理想の麻希は自分自身の心が醜いと強く思っているので、もしかしたら鏡(or彼女の目)に醜怪な姿(イグアナ)になって映った、と考えられなくもないです。千里の例もあり、混沌の鏡がそのままを映す鏡ではなく、その人の望んだ姿、思い込んだ姿を映す可能性は高いです。 鏡というアイテム、母と娘の関係を描いているという点では、『イグアナの娘』は関係なくもなさそうです。でも、なんでまた急に? って感じですよね……。作中、他に伏線らしいものはなかったと思うのですが、どうだったかなあ。可能性としてもっとも大きいと思うのは、単に当時の流行のネタだった、というだけ。当時は誰でも「あーあれね!」と一発でわかるネタでも、時間が経つとわからなくなるのってありますよね。「CMネタはすぐ風化するぞ」みたいなこと。 それとは別に、ゲーム中に具体的にイグアナの伏線はあったぞ、など、なにかご存知の方は是非お教えください。 |
聖エルミン学園の制服の色問題 [2018.2.23] これももう謎としか言いようがない、制服の色。あれは緑色なのか、灰色なのか? 説明書などの絵では緑っぽいですが、ゲーム画面で見ると灰色っぽい。どっちなのー! 長年謎に思っていましたが、さすがデジタルの時代、光明が。結論から言うと、私の見解は「DIC609」(C52 M31 Y53 K0)です! んー、まあ、結局、「緑がかった灰色」「灰色がかった緑」という言い方しかできないんですけどもw でもとりあえず緑色が入っているのは確かです。ただの灰色ではありません。 この「DIC609」はどこから出てきたかというと、ふたつあります。ひとつは、公式のアクキーの画像。ペルソナ20周年でイベントがあった時、歴代主人公のアクリルキーホルダーが発売されました。そのピアス(異聞録主人公)の画像から色をスポイトしたものです(キーホルダーを写真に撮った画像ではなく、図柄そのものの画像)。もうひとつは、『女神異聞録ペルソナ デジタルコレクション』に入っていた画像です。これはゲームに使用されたものと同一、というかRGBそのままの画像データのはずです。多少減色されてる可能性はありますが。これら2種からスポイトした色が、この「DIC609」なのです。印刷物ではなくデータそのものであること、また複数で色が一致したことが現在考えられる中では信憑性があるのではないか……と思います。他に信憑性があるとすればPC版異聞録なのですが、私のPCでは動かないんですよねー。 他には、罪罰とPSP版の追加シナリオに登場するエルミン学園の制服があります。こちらはキャラの立ち絵では明るめの色に、フィールドのキャラでは緑みの強い色になっています。ただ、私はこれらを動画を通してなど間接的にしか見られないため、生データとはいえません。それからPSP版異聞録のサイトの画像もスポイトしてみましたが、こちらはかなり暗めの印象の色でした。 と、つべこべ悩んでいますけども、例えば公式のコミカライズを見ると、緑みの無い灰色で塗ってたりします。『倶楽部』に載っている公式パロディ漫画では灰色というよりほとんど黒。というわけで、ざっくり好きなように塗るのが一番でしょう。結局! 話はズレますけど、変わった色の制服ですよねえ。色自体でいえばミリタリーっぽい。けど、ミッション系高校のどっちかと言うとハイソな制服という。この色に決定したいきさつを知りたいものです。 先日たまたま『金田一少年の事件簿』のアニメを見ていたら、明智さんの高校時代のエピソードがあったんですけども、その学校の制服が色も形もエルミンそっくりだったので、機会がありましたら是非ご覧ください。たぶんたまたま似てるだけだと思いますが。緑色がもっと鮮やかな感じの色でした。そのように、もっと緑色に寄るなら、制服として無くもない感じがします。 [追記 2019.3.9] 制服の色について気づいたことがあったので、ここに記載しておきます。 先日、「アラジンからミニサイズのストーブが新発売」という話題をツイッターで目にしました。アラジンというのはイギリスの石油ストーブの老舗メーカーで、最近は家電も出しています。公式サイトはこちら。 そしてそれから数日後、同じくツイッターで「おばあちゃんの家にある古い家電はなぜザクの薄いところの色なのか」というツイートを見ました。 古い家電の色とはまさしく、さきほど話題にしたアラジンのストーブの色です。上記公式サイトから製品ページを見ると、薄いグリーンのカラーの製品が多数あります。そういえば、昔のレトロな家電にはこの色が多いです(例:google画像検索 - レトロ 扇風機)。そこでハッとしました。エルミン学園の制服の色って……もしかして"レトロな色"として設定されているのでは……? 『異聞録に見る当時の流行・主にブラウンについて(記憶で)』にも書いているのですが、90年代半ばはファッションからインテリアから、レトロポップが大ブームでした。上記のアラジンのストーブなどのレトロ家電系もその範囲に入っていました。……ありうる! あの制服の謎のグレーがかった薄緑色は、レトロっぽさを表現するカラーの可能性が! そして、聖エルミン学園の生徒は他校生から「ザク」と呼ばれている可能性を……。ガンダムカラーのMSグリーン。 |
麻希と神取、人形と鏡の話 [2018.2.23] 異聞録という物語のキーになるキャラクター、麻希と神取。このふたりが奇妙な巡り会いを起こしたことから、この物語は生まれます。 物語の表層的には、「麻希の心の弱さにつけこんだ神取が、麻希の心の世界にあるコンパクトの力を利用し、世界を滅ぼそうとする」。そこには利用する者とされる者の関係しかないのですが、このふたりには「現実に絶望している」という共通項があります。 私は、その共通項がこのキーキャラクター達を結びつけるものだと思っているのですが、しかしどこか物足りない気もしていました。お話として、「このふたりでなければ」という意味がもう少し欲しいのです。そして、どこかにそれがあるように思えていました。私が気づけていないだけで。 ところで、以前何かで人形と鏡と化粧について書かれた文章を読んだ記憶があり、その記憶が異聞録の解釈に重なるような気がしていました。人形も鏡も、異聞録に関係がありますよね。「気がしていました」というのは、それがなんの本だったか全く思い出せなくて……。で、とうとう思い出せたのです。それは寺山修司の『青女論』。改めて件の章を読み返したところ、私の記憶はビンゴでした。そしてこれによって麻希と神取というキャラクターの立ち位置がはっきり意味づけできました。いや、もちろん私個人の解釈ですけどね。以下、そのような話です。 幼児、特に女の子は人形遊びをします。人形に綺麗な服を着せ、髪をとかし、一緒におしゃべりし、食事をし、おでかけし、夜は風呂に入り、布団に寝かせます。これは「自分を外側から眺めたい」という願望が込められているそうです。人形は分裂した自分自身であり、美しく着飾り、食事や遊びで満たされた自分を見たいのです。そして年を重ねると、人形から鏡へと対象を移します。鏡に映るのは現実の自分の姿です。美しかった人形(理想)の自分とは多かれ少なかれ違います。この時に生じたギャップを様々な心理や方法で克服するという、分裂していた自分を統合する努力が行われます。これが精神的成長のひとつの段階です。 鏡を見た時に映るものには、もうひとつあります。それは世界。鏡に映る自分の姿は、自分の家の洗面所の前であれ、洋服屋の試着室であれ、街角であれ、"どこか"にいます。「世界の中にいる私」。世界には他の人がたくさんいます。鏡を見た時、世界、すなわち社会、他者と自分との関係性も知ることになります。世界と自分とは調和しているだろうか? この場にそぐわしいだろうか? もしくはその反対、世界は私にふさわしいだろうか? 人形と自分とのギャップと同時に、世界と自分とのギャップもここで突きつけられます。 人形、世界、自分のギャップを目の当たりにし、さてこの乖離を埋めるにはどうしたらいいのか……。ここで生まれるのが「ペルソナ」(ここでは心理学用語の方)です。本当の自分の上に仮面をつけて変身し、本来の自分とはちょっと違う自分を演じます。そうすれば人形に近づくことも、世界と近づくこともできるのです。それは時に逃避の方法であり、時に戦いの装いでもあります。そうした心理的な働きでなく、具体的な方法で言えば「化粧」に代表されるでしょう。特に女性は化粧をすることで世界(社会)と自分との関係を操作しているのです。 まずペルソナという克服方法を挙げましたが、他にもあります。それは、自分を根本から変えてしまう方法。ペルソナは装う、隠しているだけであって、根本の自分を変えてはいません。そうではなく、自分を本当に変えてしまうということ。おそらく、とてつもない苦痛を伴う方法でしょう。自分が自分でなくなるのですから。それからもうひとつ、人形や世界の方を変えてしまうという方法。人形、つまり理想を変えるのは比較的簡単でしょう。理想を捨てたり、低くしたりということです。決して無血で済む方法と言うわけではありませんが。では世界は? これは難しい方法です。世界(他者を含む)の方を自分に合うように作り変える……。現実的には不可能なことです。 普通は、世界を変えることができないのでペルソナを使う、または自分の方を変えてしまう、人形を変える。ここで異聞録の話に帰りますが、もうお気づきですよね、神取は世界の方を変える方法を手に入れて、実行したのです。 ここで、麻希と神取というキャラクターをそれぞれ考えてみます。 麻希は、長い病身から現在と未来への希望を失い、妄想の世界に没頭しています。心の中で、人形である「理想の麻希」に「理想の世界(他者を含む)」を与え、それを眺めています。現実の麻希は人形(理想)に近づくこと、思うようにならない世界と戦うこと、つまりペルソナをつける気力が薄弱となり、ほぼ放棄しています。ただベッドに横たわって人形の麻希を想像するだけ。現実の世界へ働きかけることを諦めています。 神取は由緒ある裕福な家に生まれ、恵まれた体躯と頭脳で誰よりも前を歩き、皆の羨望の的。神取には人形(理想)とのギャップはあったのでしょうか? 少なくとも傍目には無いと映ったでしょう。しかし神取が異聞録の中で世界を変えたがっていることからして、自己と世界のギャップの方は埋められていないらしい。人形とのギャップが無いからこそ、世界とのギャップに我慢ならないのでしょうか。ともあれ、世界の方を変えるために能動的に動くのが彼です。 この辺りから私の憶測ですが、麻希と神取は正反対の性質だと思います。麻希はペルソナをほぼ放棄していると書きましたが、神取はその反対で、ペルソナが圧倒的に強固なのではないか、と。神取は厳しい家庭に生まれたため、普通よりも早く、幼いころからペルソナを必要としたのではないでしょうか。自分で自分の心を守らなければ生き残れないのです。ちなみに、ほぼ同じ境遇にあったのが南条、それから『罪・罰』に登場する須藤竜也です。特に後者は厳しい境遇に耐えられず、脱落したケースです。神取は誰よりも強固なペルソナで本当の自分を覆い隠して武装したために、須藤竜也のような運命は辿らなかったのではないでしょうか。 このように、麻希と神取はペルソナの強さという点では両極端、真逆の性質にありながら、「現実への絶望」という真ん中にあるものを共通項にして繋がったのではないか、と思うのです。物語の中で両極に位置するのはこのふたりしかなく、私の求めている「このふたりでなければ」という意味づけはこれだ! と思うのです。 以上がひとまず簡略な言いたかった内容です。以下はもっと深読みしていく話なので、ご興味がありましたらどうぞ。 上記の人形遊びのくだりでお気づきかと思いますが、人形遊びから鏡へ移行した時に直面する「分裂していた自分を統合する努力」、これはペルソナシリーズで定番となって来ているシャドウとの対峙に該当します。人形(理想)の存在によって、自分の醜怪な部分がクローズアップされてしまった鏡像、それがシャドウでしょう。ペルソナシリーズはティーンエイジものですから、ペルソナをつけて日々を過ごすことに慣れてしまっているが、まだ完全にそのことに納得できていない年頃を描いていますね。ペルソナで覆い隠している本当の自分と改めて対峙する、という「二段階目」を描いている感じでしょうか。 ともあれ、実際には幼児の段階で発生する通過儀礼なんだなーと納得です。シャドウとの対峙、私たちにもちゃんと起きていたんですね。たぶん。 ちなみに鏡像を見たときにギャップを感じないのがナルシシズムらしいですよ。ナルシストはペルソナいらず! さらに麻希について。人形(理想)とのギャップが埋められないなら、先に述べたように人形(理想)の方を変えるという方法がありますが、これは麻希には適用できませんでした。病身ゆえに、理想の方がどんどん強大になってゆくのを止められないのです。ろくに身動きできない上に理想(夢)を捨ててしまったら、何が残るのでしょう。あまりにもみじめです。それから、自分の方を現実に合わせて変えてしまう方法。残された方法はこれだったでしょう。しかし、麻希はそれをしなかったのか、できなかったのか。ここはもう性格だと思いますが、やっぱり麻希は根本に強さを持ち合わせていて、それが裏目に出たのだとしても、その頑固さで自分を変えることだけは許せなかったのかも。わがままとも受け取れますが、それが最後の砦だったとも言えるでしょう。自分を別の人間にしてしまうほど、悲しいことはありません。 理想の麻希がペルソナ(ここではゲームの中のあのペルソナの意味)を使えるのはなぜか。これもながらくひっかかっていた点です。理想の麻希は現実の麻希の一部なので、結局は麻希自身がペルソナを使えた、ということらしく、それはそれで理解できるのですが、なんとなくよくわからない……。で、今回の筋道で改めて考えていくと、現実の麻希が考えた理想の麻希が「世界と戦うための力(ペルソナ)」を持ち合わせているのは自然です。「世界と戦う力を持つ強い自分」もまた理想だからです。これは神取や主人公たちの介入で麻希の理想の世界がおかしくならなければ発現しなかった理想のひとつだと思われ(麻希の世界があのままだったら発現しない)、麻希自身の生への意欲、戦う力が理想の麻希を通して目覚めた、ということでしょう。 麻希が持つコンパクト。これは物語の象徴アイテムである「鏡」のひとつで、女の子が持ち歩くものと言えば、という単純な理由で採用されたのかもしれません。が、今回のように考えていくと、コンパクトで連想するものは絶対に「化粧」です。そう、化粧こそペルソナ。世界と自分との関係を操作するための戦いの装いです。そう考えると、麻希には初めからペルソナの力が備わっていることが示唆されていたように思えます。もちろん元ネタの『ひみつのアッコちゃん』も、「変身」というペルソナの力に違いありません。 さらに神取について。上記で「神取には人形(理想)とのギャップはあったのでしょうか? 少なくとも傍目には無いと映ったでしょう」と書きました。彼は完璧人間だからです。私の想像ですが、当初はそれなりにあったのではないでしょうか。そしてペルソナを身につける。ここまでは普通ですが、最終的に彼はほとんどペルソナそのものになっていたのではないかと思うのです。上記のように、外面を求められるかなり厳しい境遇にあるためです。もはや、本当の自分とペルソナの比率が逆転してしまっていたのでは、と。異聞録の漫画版の中に登場する仮面の男子生徒は、明らかに神取のシャドウの役割です(神取は仮面の男子生徒の存在を認めたくない、との発言。認めたくないと言えばシャドウです)。そして仮面の男子生徒は最後まで仮面をしたままで、それを外した瞬間に消え去ります。ゲーム版ではそこまで詳しく出てきませんが、私は漫画版のこのくだりに納得がいきます。もしかして、神取はペルソナの比率が高くなってしまったために、本当の自分がどんどん小さくなって、ほとんど見失っていたのではないかと。だから、仮面の男子生徒には顔がなかった。仮面(ペルソナ)を外してしまえばそこには何も残らない。ペルソナの方が自分自身だと思い込み、ペルソナの下の素顔を忘れてしまっていたのではないか。最終的に神取がペルソナであるニャルラトホテプに飲み込まれてしまうのも、そう考えるとしかるべき出来事だと思えます。ペルソナを使っても、ペルソナが本当の自分だと思ってはいけない、本当の自分を忘れてはいけないということです。 そもそも神取のペルソナがあのニャルラトホテプであるということ。ペルソナシリーズの大ボスも大ボスです。シリーズを重ねた今考えてみるとものすごいことなので、その辺の整合性もひっかかる点でした。しかし、ペルソナが自分自身というレベルに達しているなら、それもあるなと。ペルソナシリーズ歴代の悪役のことを考えていきますと、みんな二面性があるのです。皆、仮面の裏に本当の自分を隠し、ある契機で本性を現します。しかし神取に二面性は無い。最初から最後まで神取は神取でした。この二面性の無さが他との大きな違いであり、ニャルラトホテプを使う資格なのではないでしょうか。神取を倒すとドロップされるニャルラトホテプの封神具『無貌の仮面』。ニャルラトホテプと言えば、千の貌(顔)を持つということ。彼は様々な姿で立ち現れます。そしてそれは「無貌」、つまり「顔が無い」ゆえだとされています。これほど神取にぴったりのペルソナは他にないでしょう。彼の二面目のはずの本当の顔がもう無かったのだとしたら、ですが。 仮面の男子生徒が神取のシャドウだったとしたら、一体どういう性質を持っているのでしょう。言動は神取自身とさほど違いませんが、やはり異なるのは見た目。幼いということに意味があるのではないでしょうか。つまり、「戻りたい」ということ。高校時代まではまだ本当の自分を自覚していたのに、その頃何事かが起きて(または何も起きなかったがために)、ペルソナと本当の自分との比率の中間地点をすぎてしまったのかもしれません。異聞録の前身である『if...』では、神取の前身であるハザマはラストシーンで幼児の姿に戻ります。ハザマは幼児期に起きた家族の離散の悲しみがその心の歪みの発端となっていると思われ、追い詰められた最後の最後にその姿になるのです。それは「戻りたい」「あの時からやり直したい」という気持ちの現れでしょうか。神取と仮面の男子生徒にもそういう意味合いがあるのかも。シャドウと言うよりは、その残滓のようなものかもしれません。 神取がコンパクトの力を手に入れ、それを行使したあと、神取は虚無感にとらわれます。世界を思うようにできるようになったら急につまらなくなる。手に入れた途端に興味を失うというよくあるパターンと言えばそうですが、これも今回の筋道で考えるとしっくりきます。世界を自分の都合の良いように作り変えた……それはペルソナを使わなくていい世界のはず。でも、神取をペルソナがほぼ自分自身とすると……ペルソナを使わなくていい世界にいたなら、存在意義すら否定されてしまうのです。そこには虚無しかありません。 麻希の一部であるマイは、コンパクトの力が現実に働くことに感づいてそれを行使していましたが、マイ自身が内面に向かった利己的な存在なので、大きな悪用はありませんでした(内藤、千里は災難でしたが)。でももし、現実の病身の麻希の手にそれが渡っていたら、どう使ったのでしょうか。もし、自分を理想の麻希のように健康にして、世界も自分の都合のいいようにしたら。……そこで麻希も虚無の味を知るのでしょうか。麻希の心の底に眠っているペルソナの力が日の目を見ることがないのなら、そこにはやっぱり神取と同じ虚無が待っているのではないか、と思えます。ふたりとも、「私にふさわしい世界」を求めました。神取の行ったことと、実行こそしなかったものの麻希の思い描いたことはやはり合致しているのだと思います。「このふたりでなければ」の意味づけをここにも感じます。ペルソナの要らない世界を望んでも、それは自分自身を否定することになる。ペルソナは生の力であり、その否定は死です。 神取の「何のために生きているのか」の問いに対して主人公が選択する「その答えを探すため」、はっきり言ってずるい答えだなーとは思うのです。神取も麻希も答えを探し求めて苦しんできました。でも、「探すこと」と同時に「どう探すか」が大事なのだということなのでしょう。麻希は自分の力で現実を切り開くことを諦め、神取は他者の力(コンパクト)で願いを叶えてしまった。自分自身の力で世界と戦うこと、世界との調和を目指すこと。それを怠った時、ニャルラトホテプの影がさしてくるのだと思います。 |
異聞録は何月か問題 [2018.11.24] 異聞録の作中には年月日が登場しません。しかし二次創作する身としてはだいたいの時期がわからないといろいろやりにくいのが実情です。この問題には度々頭を悩ませます。制服が長袖であることから、夏以外であろうということは確かです。 私の場合は秋、10月の上旬を漠然と想定しています。 その根拠と言えば「異聞録の発売日が9月20日(その近辺だと想定すると臨場感がある)」、「半年というワードが出てくる(4月から数えれば半年は9月いっぱいまで)」、「体育祭の直前である(体育祭は秋にやりそう?)」、「女子の服装が冬にしては薄着すぎる(綾瀬以外)」といったところ。これだけでも満足できる根拠だと思うのですが、でも、あと一歩な気も。夏はないにしても、春や冬という可能性も考えられなくはありません。 まず春の可能性を否定する要素なのですが、先日ふと「たまきちゃん」について考えていました。彼女は『if...』の主人公です(※『if...』と異聞録は同じ世界orパラレル世界、いずれの可能性もあり、公式も「たまきちゃん」が『if...』の主人公と同一人物かどうかの発言を二転三転させています。ここでは『if...』と異聞録は同じ世界軸、そしてたまきちゃんが『if...』の主人公だということで進めます)。 『if...』の中で彼女は高校2年生で、転校してきた異聞録でも2年生です。つまり『if...』と異聞録の間の時間は絶対に一年以内。そして『if...』では登場人物の服装は長袖、つまり夏以外の春秋冬のどれかです。それから異聞録ではただし君と仲良くなっているので、交友を深める期間もいくらか欲しいところです。 これら『if...』→転校→ただし君との交友→異聞録、を4〜5月の二ヶ月の間に済ますのはちょっと短かすぎます(夏服への衣替えは6月なので春は5月まで)。このように、たまきちゃんの事情を考慮すると、少なくとも異聞録春説は否定されるわけです(ただし、たまきちゃんがダブったとすれば春も…ありうる…!)。 春と夏は否定されました。では秋か冬。冬の可能性も全く無いわけではありません。が、最初の方で述べたように、みんなの服装が冬にしては薄着です。男子は冬服ではありますが、綾瀬以外の女子はブラウス。それから冴子先生は半袖or腕まくりのブラウスの上に上着をひっかけています。ブラウスの胸元も結構開いています。これら女性キャラクターの薄着からいくと、冬ではないと思うのです。 また、雪の女王編では校舎が極寒になってしまうのですが、もしも冬ならみんなコートや手袋、マフラーなど何らかの防寒具を持っていそうなもの。それがグラフィック演出上難しかったのだとしても、冬なのならば「冬がさらに寒くなった」というような表現は出てきそうなものです。雪の女王編としても、冬想定は無さそうに思えます。 という感じで、私は秋の可能性が強いと考えました。で、秋といっても関東近郊では9月後半〜11月と長いです。そのどのあたりなのか。これは男子の制服が冬服であることから、10月を過ぎているのではと予想されます(衣替えは10月1日が一般的)。つまり10〜11月(寒さを考慮するとギリギリ11月の上旬ぐらい?)までではないか、と考えます。 というわけで、決定打はありませんが、消去法で10月〜11月上旬と想定するのが無難ではないか、と思っています。 ちなみにですが、漫画版では11月3日〜4日の出来事としているようです。 |
ペルソナシリーズの統一用語 [2018.11.24] 先日ふと、異聞録のラストダンジョンである『アヴィデア界』の「アヴィデア」てなんだろ? ということに思い当たりました。 漠然と心理学用語かなーと思っていまたのですが、検索したところどうやらヒンドゥー教の用語のようです。 そこでハタと気づきました。アガスティアの木、デヴァ・ユガ、アヴァターラ(を使って得られるペルソナがヴィシュヌ)、……異聞録にはヒンドゥー教の用語がいろいろ散りばめられています。アガスティアの木などは特に、なんの説明もなく当たり前みたいにゲームに登場するのですが、そうか、異聞録全体はヒンドゥー教の用語で統一されていたんですね。20年以上経って気づく! 遅い! で、ようやくナンバリングの各作品もそうだということに気づきました。 罪罰ははっきりしませんが、中国風なので道教? P3以降はメインキャラクターのペルソナ名も統一され、P3では用語もペルソナも全てギリシャ神話。P4は用語は日本神話、ペルソナは日本神話、アイヌ神話、民話、歴史上の人物などですが全部和風。P5ははっきりしませんが、用語はキリスト教とユダヤ教(カバラ)とグノーシス主義? ペルソナは実在・非実在に関わらない世界中のピカレスクキャラクター、反逆者(のイメージのある人物)、異端者、だと思います。 ということは……もしP6があるとしたらなんでしょうね。ケルトか、仏教か、イスラムか。エジプト神話とかネイティブアメリカン神話もあるかも……(ネイティブアメリカン神話はソウルハッカーズがそうでした)。こういう軸で考えるのも面白いですね。 ちなみに異聞録の初期ペルソナは以下。
こうして見るとほとんどバラバラです、意図しているのでしょうか。そして初期ペルソナ自体にはヒンドゥー教は入っていないんですね。 |
異聞録に見る当時の流行・主にブラウンについて(記憶で) [2018.11.24] 異聞録の話をすると、かなりの高確率で話題にのぼるのが綾瀬です。なぜかというと、「コギャル」だからです。 1996年当時はコギャルがブームでした。異聞録開発時はガングロブーム(最初は「日焼け」程度でしたけど)の直前だったそうで、発売日がもう数ヶ月遅ければ綾瀬もガングロのコギャルだったことでしょう。 綾瀬がガングロでなかったのは残念ですが(?)、異聞録の時代を象徴するワードとして「コギャル」はかなりキャッチーなようで、話にのぼる割合は高いです(なお私調べ!)。 異聞録には当時の様々な流行がちりばめられています。そのもっともキャッチーなものが「コギャル」なわけですが、その次はと言うと、おそらくマークです。当時風に言うと「ストリート系」。ヒップホップが音楽でもファッションでも大ブームの頃で、それを主軸にしたストリート系ファッションは当時の最先端でした。グラフィティアートを嗜むマークはまさに1996年の男の子! という感じがします。 で、その次は? と言うと……案外俎上にのぼらないのがブラウンです。 当時をご存知の方にはなんとなく伝わると思うのですが、彼はレトロポップ系、レトロフューチャー系のファッションだと思います。実のところ私もあの系統を一言でなんと呼ぶのかわからないのですが、呼ぶとすればそういう感じかなと思います。 レトロポップ系、レトロフューチャー系とはどんなものかといいますと、1960〜70年代のヒッピーファッション、パンクファッション、1950年代のミッドセンチュリーやレトロフューチャー(これはファッションと言うよりプロダクトデザイン)、モッズファッション、これらに現代的なテクノポップのテイストをミックスしたもの……だと思います(表現しづらい……)。今も数十年前のファッションが定期的にブームになるように(ここ最近は1980年代ブームですよね)、1996年当時もそういうブームでした。 ちなみに、おそらく今の感覚でブラウンを見ても、とにかく個性的なファッションがポリシーの少年なのだろう、ということは伝わっていると思います。当時としても相当変わった子なのは間違いないです。私服ならともかく、学校であれとは! ファッションのディティールはともかく、骨子は伝わっていることと思います。 具体的にブラウンのどこが何なのか挙げていきます。私の記憶準拠で…。 【ゴーグル】大きくて丸みのあるフォルム、派手なオレンジ色のグラスはまさにレトロポップ。ちょっとおもちゃっぽい、チープな感じもこの系統の要素だと思います。 【ブーツ】光沢のある素材感、紐でなくバンドタイプで非アナログな感じがするデザインはテクノポップのテイスト? はっきりわかりませんが、たぶん。(関係ないけどAKIRAの金田を彷彿とする色合い…。) 【腕時計】大きく丸みのあるフォルム、カラーのガラスはレトロフューチャー系。ちなみにこの系統は具体的にブランドもわかります。国産ブランドの、セイコーのアルバのAKAシリーズ、シチズンのインディペンデントシリーズ(初期)などだと思います。海外ブランドもなにかあったかもしれないけど覚えておらず。 【指輪、イヤーアクセ、ブレスレット】当時はごつめのシルバーアクセが流行でした(有名どころだとクロムハーツとか)。この辺りはパンクファッションの系統。指輪はヴィヴィアン・ウェストウッドじゃないかなあと思います。 小物は以上です。 では本体である服は? と言うと……まずブラウンの下地として説明しておくべきは「フェミ男」の話です。 90年代半ば頃、「フェミ男」という男性のタイプがちょっとしたブームになりました。「フェミニンな男」という意味で、細身体型で女性物のファッションが似合い、アクセサリーを身につけたり眉を整えるなど、全体的に女性的な雰囲気を持つ(でもなよなよしたり女言葉を使うという意味ではない)男性を指したようです。具体的な芸能人名で言うと、武田真治さんやいしだ壱成さん、堺雅人さんだそうです(今のイメージからは想像できないけど……今はみなさんむしろ男らしいですよね。ちなみに90年代前半、武田真治さんはドラマ『NIGHT HEAD』で美少年役でしたね)。 公式本『女神異聞録ペルソナ デジタルコレクション』によると、ブラウンのモデルについて、シャ乱Qのつんくさんと武田真治さんの名が出ています。まさにそれです。また、公式本『金子一馬グラフィックス―女神転生黙示録』に掲載されている初期ラフ画では、ブラウンはフリルのついたブラウスを着ていて、そんな感じがします。 そのようなわけで、ブラウンにはもともと「フェミ男」というコンセプトがベースにあったと思われ、ファッションも細身に設定されているようです。制服の上着は他のキャラクターと比べると明らかに横幅を詰めています(改造制服なので、本人の好みでわざわざそうされたことが伺えます)。 それから「フェミ男」とは関係なく、当時モッズスーツもブームで(ぴったりした細身のスーツ。特にロックミュージシャンに多かった気がします。ミッシェルガンエレファントとかウルフルズとか。シャ乱Qもそうかな)、ブラウンの上着の細身加減、襟の部分がテーラードカラーっぽいことから、ちょっとそっちの系統も感じます。当時はモッズスーツに派手な色や柄のシャツを合わせるのが流行っていたので、中のTシャツの色が派手なのはその印象があります(そういえば公式攻略本のインタビュー記事のお花畑の写真が有名ですが、あの時金子さんがダークカラーのスーツにビビッドな青のシャツ。まさにああいう感じです。スーツはモッズ型じゃないけど、色の合わせた方がまさにそれ)。 当時は「チビT(ピチTとも)」というぴったりしたサイズのTシャツもブームで、制服の下のTシャツはそういうタイプでしょう。色合いもレトロポップな雰囲気です。 というわけで、本体全体としては「フェミ男」がベースにある「モッズ+レトロポップ」、ではないかなーという印象です。 それから髪の色ですが、これはパンクっぽいですかね……たぶん。絵では赤っぽいですが、ゲーム中では「茶髪」と言っていました。 髪型はやはりフェミ男時代の武田真治さんやいしだ壱成さん系統かなあと思います。モミアゲを強調して、シャギーが入って頰にかかる感じがそれっぽいです。 以上、私の当時の記憶による、ブラウンがどのように当時の流行ファッションかの解釈(?)でした。正直あんまり正確性は無いと思いますので、気になる方はお調べください。 こうして書き表して見ると、いろんな要素がミックスされてるなと思います。上記に挙げただけでもレトロポップ、レトロフューチャー、テクノポップ、モッズ、パンク、あたりの印象です。ブラウンは、綾瀬の「コギャル」、マークの「ストリート系」のように一言で言いあらわせるキャッチーな言葉が見当たらないため、異聞録のファッション的話題になかなかのぼらないのでは、と感じています。 うーん、何かいい言葉があるのかもしれない。わかる方、ご教授ください。 ついでにその他の流行要素 他のキャラクターの流行要素にも軽く触れておきます。 ●主人公 【腕時計】カシオのGショック。90年代は大ブームでした。異聞録発売当時、ロゴ入りの特製Gショックが抽選で当たるキャンペーンを行なっていました。まさにそのものです。 [加筆(19/1/8)] 懸賞のGショックの正確な型番を調べたところ、「nexax(ネグザクス)」の「DW-002J-1B」。バックライトで「G」の文字が浮かび上がる「FOX FIRE」モデルのひとつだそうです。参照:「CASIO - 製品情報 - DW-002J-1B」「G-SHOCK DW-002 コレクション - DW-002J-1B」←公式サイト画像だと液晶画面の周りのパーツが黒いですが、少なくとも懸賞商品は後者画像のようにグレーです。参照:「鎖月 様 twitter - 2018年6月5日」←実際にお持ちの方による現物の画像。すごい! 主人公がつけている腕時計の細部とDW-002J-1Bは異なっていますが、雰囲気は近いので参考になります。 ほか、髪型はもう謎。ビジュアル系っぽい…?? ビジュアル系も90年代に大ブームというか全盛期でした。耳のピアスもパンクというよりビジュアル系寄りなのかも。 ●麻希 流行要素は感じず。髪型など特に流行というわけではないです。スカートは割と短いけど。コンパクトはもちろん『ひみつのアッコちゃん』モチーフでしょう。 ●マーク 【髪型】公式本『ペルソナ倶楽部』によると茶髪の五分刈り、つまり坊主頭。ヒップホップ系といえば坊主です(ちなみに当時まだ「Bボーイ」や「B系」という言い方はなかった…気がするんですが、近いうちに現れたはずです)。 【靴】ハイカットのスケートボード用っぽい感じです。当時はスケボーもストリート系の大きな要素だったので、スケーターブランドの靴も人気でした。マークの靴はVANSの「SK8-HI(スケートハイ)」っぽいと思います。 ほか、頰のペインティング、帽子、缶バッジ、ピアス、ブレスレット(エスニック系?)、リュック、トレーナー、全体的に「ストリート系」でひとまとめ。ただ、頰のペインティングはすごいですよね。当時もここまで個性的にしてる人はまずいなかったでしょう。これは漫画的な表現の範囲だと思います。フェイスペインティングが流行ってたわけではないです。 グラフィティアートは当時最先端のアート行為で、それ自体が強いファッション性を持っていました(今もまあそうかな)。実際に描画できる人はなかなか少なかったと思います(もちろん無許可で他人の所有物に描くのは違法なわけで、グラフィティアート(また、タギング)がブームになったことで落書きの被害は爆発的に増大したと思われます。グラフィティアートが流行るまでは「夜露死苦」みたいなヤンキー落書きしか存在しなかった)。 公式本『ペルソナ倶楽部』によると、購読雑誌は『BOON』とのこと。ストリート系ファッション誌です(が、割と大衆的な雑誌で、コアではない)。 ところでヒップホップ系ファッションと言えば、悪名高い「腰パン」(ズボンのウエストを極端に下にずらし、下着を見せる着こなし)ブームですが、それは当時はまだ無かったです。このブームはもう少し後(1〜3年後?)だと思います。 ●南条 流行とは全く関係ない、おぼっちゃまファッション。 ●エリー 流行とは全く関係ない、お嬢様ファッション。帰国子女なのでファッションの系統も海外系らしい。公式本『ペルソナ倶楽部』によると、購読雑誌は『ELLE』だそうです。 ●ゆきの スケバンファッション。長いスカートはスケバン(ヤンキー)の証。当時はコギャルブームでスカートはどんどん短くする方向でしたから、長いスカートはもう絶滅していたはずです。ちなみに初期武器の「かみそりづる」は『スケバン刑事』に出てくる武器。そのようなわけで、ゆきのさんは80年代担当という感じです。ヤンキー文化に明るくないのでわかりませんが、腰のチェーンはヤンキーの定番グッズなのかなあ(2000年頃にウォレットチェーンみたいのがやたら流行りましたが時期的に関係ないし…)。 公式本『ペルソナ倶楽部』によると、好きなファッションブランドは「アニエス」との記載。おそらくアニエスベーのこと。モノトーン系でシンプル、ソリッド目の感じでしょうか。 ●綾瀬 【ルーズソックス】コギャルといえばルーズソックスが必須アイテムでした。ただし、現実では色は白のみです。綾瀬のような色のついたルーズソックスはありませんでした(少なくとも流行ってはいないです)。 【カーディガン】コギャルの御用達率が高いのがカーディガンでした。現実ではラルフローレンの紺色のものが代表的でした。 【靴】ヒールの高いローファーが流行っていました。 ほか、金髪は当時としては結構珍しかったかも…? 茶髪は流行っていましたが、金までいくのはなかなかすごい。ガングロブームになると金髪が多くなった気がします。ピアスとチョーカーは特別流行というわけではないです。 公式本『ペルソナ倶楽部』によると、好きなファッションブランドは「ナイクラとラブボー」と記載されています。おそらく、ナイスクラップとラブボート。前者は割とオーソドックス(現在もあるブランドです)。後者はギャル系です(2014年に閉店、渋谷の109などにお店がありました)。 同書によりますと、購読雑誌は『an・an』とのこと。意外ですがこれも普通。 ●玲司 【靴】ナイキの「エアトレーナー パトロール」という型がモデルになっているスニーカー。90年代にナイキのハイテクスニーカーは大ブームで、特に「エアマックス95」というモデルが異様な人気で社会現象となりました。 【チョーカー】公式本『ペルソナ倶楽部』によるとあれは首輪ではなくチョーカーらしいです。当時はごついシルバーアクセが流行っていたので、その一環…と考えられなくもないです。パンク系? なんにせよ学校につけてくるのはすごいですが。 ほか、全体的に70年代担当と言った感じ。『愛と誠』『男組』のミックス。ちなみに96年当時は男性のロン毛ブームでしたが、天パは好まれませんでした(『if...』のアキラ君のようなストレートのロン毛が好まれる。ちなみに女性もストレートが好まれ、天パやパーマは不人気だったはずです)。 あのグローブはなんなんでしょうね。北斗の拳のアインしか思い浮かびません。 ●千里 【髪型】当時は顔周辺にシャギーの入った髪型がブームでした。前髪を作らないワンレン気味が多かったです。 キャラ性からいっても、当時の「イケてる」女子高生タイプだと思われます(スクールカースト上位という意味)。 以上です。これ以外の登場キャラクターには、特に当時の流行を感じさせる要素はないように思います。 私調べですが、90年代の情報はネット上には少ない気がしています。調べようと思ったら紙媒体…? ですがサブカルチャー的なことは必ずしもまとめられてはいないので、なかなか難しい分野かもしれません。ので、私の主観情報が多いですが、書いてみることにした次第です。これ以外の部分もいずれまとめて書いておきたいです。やっぱり記憶頼りですけど。他の人のこの手の記憶も聞いてみたいものです…(ほんと資料がない)。 |
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