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あなたはよく着崩れしなかったね、と言った。 「ふふ〜ん、言われると思ったんだよね。自分で着れない服じゃーおオシャレとしてはレベル低いって言うかー」 話によると、アヤセは自分で着崩れを直せるように、先月から着付けの特訓をしたのだそうだ。言うだけあって、たいしたものだとあなたは思う。それにお洒落について話す時、アヤセは楽しそうだ。 「着付け習ってて思ったんだけどぉ、オシャレもきょーよーの一種だなって」 アヤセの口から聞いたことのない言葉が出てきたので、あなたは驚いた。 「そこ驚くとこかよ! 着付けってねえ、かなりテクニックが要んのよ。ま、洋服にもあるけどさ、ちょっとジャンルが違うって言うか? こういうのって年とってからも役に立つわけだしー、今のうちに身につけとくのはアリなわけ。その辺のギャルとは違うっつーの?」 アヤセもいろいろ考えているらしい。あなたは感心して拍手した。 「拍手すんな。ま、つっても単に着たかっただけだけど」 アヤセはいつものように笑顔を見せた。着物だからと言って、特別おしとやかというわけでもないのがアヤセらしい。そういうところも含めて、華やかな着物がよく似合っている。 「よっし、じゃあ初詣行くか! やっぱ着物を着たからには和風っぽいとこ行かなきゃね」 あなたはアヤセと雑談しながらアラヤ神社へと向かった。 アラヤ神社はいつもの閑散とした様子はどこへやら、参道には屋台がいくつも立って、大変な賑わいだ。 屋台をのぞいてから参拝の列に並び、ふたり一緒に賽銭を投げ入れてお参りをした。フィレモンへの挨拶も忘れずに。 社務所もお守りやおみくじを引く人々で賑わっている。 「よっしゃ、初詣と言えばおみくじ! も気合い入れなよー」 アヤセにおみくじの筒を渡された。
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