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 あなたはおもむろにマイクを取り出し、♪ハッピバースデートゥーブラウン〜♪と歌い出した。
「や、やめろお!! なんでお前はいつでもマイク持ってるんだよ!!」
 周りの人からも一斉に注目を浴びる。あなたは別に平気だが、ブラウンは顔が真っ赤だ。
「どんな誕生日プレゼントだよ……いや、めちゃくちゃ らしいけどさ……」
 喜んでいただけたかはわからないが、気持ちは伝わったようだ(?)。
「お前ってすげーよな。どうすりゃそんなにマイペース……って言うか……"素"って言うか……うーんと……」
 ブラウンは言葉を探している。自覚はないんだろうが、ブラウンだってああもぺらぺらと無駄口を叩けるのはたいしたマイペースだと思うけど……とあなたは言う。
「えっ、おれさま、今日は静かな方だろ? 昨日とーちゃんに口は災いのもととかなんか言われちゃってさあ、おれさま今年はちょっとクールに? 決めてみよっかなとか思ったわけよー。城戸っちじゃないけどさー、ああいうちょっとミステリアスっぽいのに女子って弱いんだなーってわかったし、でひゃひゃ!」
 何を言っているんだろうか、すでに全く静かじゃないぞ。
「……マイペースって難しいな。意識してカッコつけてもしょうがないってことかあ。城戸っちもアレ、カッコいいんじゃなくて性格地味なだけだしな」
 本人のいないところですまないが、ふたりして笑ってしまった。
「マークなんかも、ああ見えて性格はかっちょいい奴だしさ。あれってすげー"素"なんだよな、マークの」
 しばし、ブラウンはみんなについてあれこれ話す。みんなそれぞれが素の自分と「ペルソナ」とを持ち合わせている。ブラウンもあの事件を通して、自分のあり方について思うところがあったようだ。
 それにしてもブラウンの観察眼はたいしたものだと、あなたは内心舌を巻いた。みんなの性格をよくわかっている。
「そんなぺらぺら喋ってるつもりはないけどさ、これがおれさまの"素"ってやつなんかな〜。"素"だからこそ気づけない? みたいな?」
 ブラウンは自分の良いところにまだまだ気づいていないのだ。それの無自覚さも"良いところ"だろうか。あなたはなんとなくおかしくて、ちょっと笑ってしまう。
「なに笑ってんだよ〜! 面白いこと思い出した時は言えよ、一緒に笑うから!」

 そんなこんなで、ふたりで並んで賽銭を投げ入れてお参りをした。フィレモンへの挨拶も忘れずに。
 社務所もお守りやおみくじを引く人々で賑わっている。
「よし! じゃー新年一発目の運試しだ!」
 気をとりなおし、ブラウンとあなたはおみくじの筒を手にした。
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