023
 あなたは元日に掃除をしちゃいけないと言うけど、トレーニングはいいんだろうか、と言った。
「……てめえの言うことはイマイチわからん。どういう意味だ」
 元日に掃除をすると縁起が悪いと聞く。ではトレーニングの縁起はいいんだろうか? という意味だと解説する。
「縁起? そりゃ……良いんじゃねえか? 筋肉もつくし……」
 レイジは首をひねっている。
「言っておくがな、俺は毎日筋トレしてるわけじゃねえぞ。毎日やるより一日置きとか、休息を入れた方が効率よく筋肉っつーのはつくんだ。闇雲にやりゃいいってもんじゃねえんだよ」
 闇雲に……少し前のレイジに聞かせてやりたい言葉である。
「やかましいわ! ……って、それもそうだな」
 冗談で返したが、意外にもレイジは納得したようだ。片手で髪をくしゃくしゃとかきあげる。あの事件まで、レイジははっきりいって冷静ではなかった。ただひたすら復讐、復讐。そのためにいろんなものを拒み、ひとりぼっちで走り続けた。そしてそれはゴールのような、ゴールじゃないようなところへ行き着いた……。どういう形であれ、復讐は終わってしまったんだ。
 レイジは再び、道路の向こうを見ている。その横顔は、寂しいようにも見える……。
「つまり、今年はもう少し落ち着いて筋トレすりゃあ縁起もいいってことだな」
 何を言うかと思ったら、案外さっぱりした顔で意味のわからないことを言い切った。そしてニヤリと笑う。
「よし、アラヤ神社まで走るぞ」
 えーっ!? っと言っている間にレイジは走って行ってしまう。仕方ないのであなたも走って追いかけた。

 あなたはレイジと走り、ぜえぜえ言いながらアラヤ神社へと到着した。
 アラヤ神社はいつもの閑散とした様子はどこへやら、参道には屋台がいくつも立って、大変な賑わいだ。
 屋台をのぞいてから参拝の列に並び、ふたり一緒に賽銭を投げ入れてお参りをした。フィレモンへの挨拶も忘れずに。
 社務所もお守りやおみくじを引く人々で賑わっている。
「おみくじか……正直俺はこういうのはあんま信じないがな。まあいい、来たからには付き合ってやる」
 レイジにおみくじの筒を渡された。
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